近年、NBAではウェスタン・カンファレンスの存在感が大きくなっています。昨年こそイースタン・カンファレンスのグリーブランド・キャバリアーズがファイナルを制しましたが、ウェストにはゴールデンステート・ウォーリアーズはもちろんのこと、サンアントニオ・スパーズやヒューストン・ロケッツなど強豪がひしめき合っています。レギュラーシーズンの交流戦でもウェストの勝率が上回っていたので、「西高東低」などと言われたりもしました。今年は一見するとイーストのチームの勝率が高く見えますが、ウェストが強豪同士で戦う機会が多いことや、イーストでは下位に沈むブルックリン・ネッツがカンファレンス内で3勝30敗という極端な低成績ということもあり、依然としてウェストが優勢な傾向は変わっていないようです。
セルティックスの復活
そのような中、かつてのNBAを席巻したイーストの強豪が復活の兆しを見せています。ボストン・セルティックスです。セルティックスといえば史上最多の17回のNBA制覇を成し遂げた名門。長い歴史の中でビル・ラッセルやラリー・バードといった名プレーヤーとともに数々のタイトルを手中に収めてきました。
近年では2007-2008シーズンにポール・ピアース、レイ・アレン、ケビン・ガーネットのビッグスリーを擁してタイトルを獲得しています。
近年はヘッドコーチのブラッド・スティーブンズの手腕により世代交代を進めながら良く組織されたチームを作り上げてきました。今年はオールスター前にイースト2位で折り返し、タイトルも夢ではない位置に付けています。
ちなみに今年のオールスターではブラッド・スティーブンズがイーストの指揮をとります。
そのセルティックスを牽引するのがポイント・ガードのアイザイア・トーマス。
彼は今シーズン1試合平均30点近くを上げ、とりわけ試合終盤の一番大事な時間帯に連続で得点を上げてチームに勝利をもたらすことから、Mr.第4クォーターとも呼ばれています。
身長175センチメートルの彼の活躍は、体格で劣っても、スピードとスキルそして強いメンタルでNBAを戦い抜くことができることを示しています。日本人選手にとってもお手本になりそうですね。
緑色のユニフォーム
さて、ボストン・セルティックスといえば緑色のユニフォームです。
セルティックスは長い歴史の中でユニフォームデザインをほとんど変更しませんでした。昔のランニングシャツの形状からノースリーブ型の形状になったり、バスケットパンツの長さが変わったりというマイナーチェンジがあるくらいです。
伝統を重んじるチームなので、サードユニフォームの導入も比較的最近になってからのこと。
これまで本拠地もチーム名も変更されていないので、懐かしのユニフォームを復刻することもありません。
アイルランド移民とボストン
では、セルティックスのユニフォームはなぜ緑を基調としているのでしょうか。これはボストンという街の歴史と大きな関係があります。
セルティックスという名前は「ケルト人」に由来します。ケルト人はその昔、ヨーロッパ大陸に多数居住していましたが、しだいに他の民族に押し出されるようにスコットランドやアイルランドに移っていきました。
ボストンとケルト人が繋がるのは19世紀のことです。ヨーロッパでジャガイモの大飢饉が起こると、とりわけ被害の大きかったアイルランドから大勢の人々が新大陸へ移住しました。
当時、世界の中心とまで呼ばれるほど産業が発達していたボストンには、仕事が豊富にあったのでしょう。多くの移民が住み着いて、経済活動を営みました。彼らが次第に社会に融け込んでいった結果、ボストンはアイルランド系の人々が強い影響力を持つようになりました。
第35代大統領のジョン・F・ケネディはアメリカ初のアイルランド系大統領として有名ですが、彼の生まれはボストン近郊、政治家としてのキャリアもここから始まっています。
偶然にも彼の在任期間とセルティックスの最初の黄金時代は重なっていました。
アイルランドの象徴
さて、ボストン・セルティックが生まれたのは1946年。このときユニフォームに緑色が採用されたのは、この色がアイルランドのシンボルカラーだったからです。
アイルランドの国旗は緑・白・オレンジの三色ですが、緑の部分はケルト人の伝統を象徴しているのだとか。
アイルランド系の移民は自分たちのアイデンティティをとても大切にします。実はセルティックスのロゴもアイルランドと深く関わっています。
ユニフォームの背中にも描かれているこのデザインは「シャムロック」と言います。クローバーなど葉が3枚に分かれている草のことをアイルランドでこう呼ぶのだそうです。シャムロックはアイルランドの至る所に生えているので、アイルランドの象徴になっているのです。
さてセルティックスといえば、このロゴが思い浮かぶ人もいるかもしれません。
一見するとジェントルマンがバスケットボールを持っているだけに見えるかもしれませんが、実はこれはアイルランドのおとぎ話に出てくる「レプラコーン」という妖精なのです。良く見ると服にはシャムロックがあしらわれていますね。
ちなみに、おとぎ話に出てくるレプラコーンはこんなイメージです。
さて、セルティックスというとサッカーのセルテッィクFCと紛らわしく感じる方もいるのではないでしょうか。この二つのチームは直接関係があるわけではありませんが、アイルランド人が関わって設立されたことは共通しています。中村俊輔が身に纏ったユニフォームもやはり緑が基調でしたね。
サッカーのアイルランド代表も勿論緑のユニフォームです。
このようにアイルランドの象徴である緑をチームカラーにしているセルティックスはホームアリーナの客席も緑一色。
このアリーナをプレーオフで大いに沸かせることができるのでしょうか。シーズン後半戦のセルティックスにも要注目です。
ページビジュアル wikipedia より